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◆Hill Top(2)

2017年6月のイギリス旅行記より。

さて、本日のメイン・イベント、ナショナルトラストの[Hill Top]の中へと
入ります。

入場制限があるプロパティなので、20分単位で入場時間が割り振られて
います。
私たちは日本人ツアーの団体客と一緒でした・・・。(--;
ピーター・ラビットなんて読んだこともなさそうなおっちゃんおばちゃんの群れ・・・やかましいし。

前回、結婚直後の姉との訪問時(20年前)は邸内の撮影は一切禁止でした。
ほとんど照明器具のない屋敷なので、その薄暗いことといったら
納戸のごとく。
正直、何を見たのかも覚えてないくらい、暗かった。(^^;

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ところが今回、なんと邸内撮影OKに!!
もちろん、フラッシュなしですが。
そういわれているのに、くだんの団体客がフラッシュ焚きまくりでイラっ。
機械に弱い中高年たちなので、うまく設定できないかもしれませんが
不用意すぎです・・・。

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Beatrix Potterは1902年に『ピーターラビットのおはなし』を出版し、
その出版業者の編集者Norman Warneと恋に落ち、親の反対を押し切り
婚約した1ヶ月後に、婚約者Normanが白血病で死んでしまう悲劇に
見舞われました。

その悲しみを振り払うように、彼女はNormanの妹であり、友人でもあった
Millie Warneに手紙を綴ってます。

   「・・・彼(Norman)は長生きはしなかったけれど、
    有益で幸せな人生に満たされていた。
    私も、来るべき新年には何か新しく始めないと。」


その、「何か新しく始めること」がHill Topを買うことであり、そこを自分好みの
家に変えていくことでした。
彼を失った哀しい思い出のあるロンドンを離れ、自然の中で、喪失の痛みを
癒していくことに他ならなかったのではないでしょうか。。。

もう一つ、想像できるのは、元々Normanとの結婚に不賛成であった彼女の
両親が、傷心の娘を傷付ける言動をしたのかも・・・。
彼らの婚約は、「Normanの兄弟にさえ公言してはならない」という条件で
しぶしぶ認められたものだったからです。

わがままで支配的な独善的な親の元で、経済的に自立していない娘が
苦しむ姿は想像に難くありません。

そんなわけで、かねてからの希望もあり、『ピーター』の印税と叔母の
遺産を用いて、彼女はHowksheadからわずか1マイルの小村に家を
求めます。
それは17世紀に建てられた、典型的な湖水地方の農家でした。
当時も今もそこはworking farm(現役の農場)で、彼女の時代には
農夫John Cannon一家が住んでいました。

そこで、彼らのために建物を増築し、新しく建てた部分にCannon一家が住み、
母屋は改築改修してBeatrixが住むことになります。

こちらが[Entrance Hall]です。

NTの職員によると、ここら辺の田舎では[Firehouse]とか[House Place]と
言い、[Entrance Hall]という呼び名自体がロンドンからやってきた、
中流階級出というBeatrixの正体を暴露している言葉遣いだそうな。

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このストーブ、この椅子・・・。
『ひげのサムエルのおはなし』に出てきますね・・・!!
暖炉の前のラグは"Peg rug"といって、リボンや端切れなどを使って
作る、北部地方の伝統的なものだそうです。

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外が土砂降りで、みんな濡れ鼠。
しばし、暖炉の火の前で乾かします。

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カップボードやサイドボードにはブルー&ホワイトの陶器が。

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この椅子もなんだか見覚えがありますし、この短靴は実際にBeatrixが
履いていたものではないでしょうかね?
いかにもヴィクトリア時代の武骨な、カントリーウーマンが履きそうです。

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このお皿もかわいい。

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この壁紙も、Beatrixが選び、張り替えたものだそうです。
ヴィクトリア時代の柄ですねー。
(実際はエドワード朝ですが)
珍しいのは天井にまで壁紙を張り巡らしていること。
通常は壁のみで、天井は白漆喰のままです。

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玄関ドアから階段にかけて、細いCorridor(廊下)があり、そこに置かれた
サイドボードにはBeatrixお気に入りの物品が飾られています。

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これ。
どこからどう見ても、Made in Japanですよねっ?!
しかも、カエル。
草履を履いた、カエル・・・(謎)。

NTのスタッフに尋ねるも「わからない」とのこと。
たぶん、明治の輸出品の一種だと思うのですが・・・。
やっぱり、Beatrixはカエル好きだったのねぇ。
もしかして、この日本の置物が『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』
に影響を与えてる可能性も否定できませんよねっ?!

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これは、Beatrixの父Rupertの絵を原画に磁器に焼き付けたもの。
お父様も、上手。

さて、廊下の反対側には[Parlour]があります。

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大変小さな部屋で、日本式で言うと8畳くらい??
ここは元々寝室として使わていたものをBeatrixがフォーマルな、
あまり親しくない客をもてなす部屋にしたそうです。
友人や家族は2階の居間で歓待されました。

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基本的には湖水地方の農家なのですが、そこに住んだのがロンドン
育ち、中流階級出身のBeatrixなわけで。
完全に伝統的な農家の暮らしではなく、彼女自身のバックボーンを
垣間見させる部分があります。
こちらの部屋はまさに、ロンドンでの、彼女の暮らしのよすがが出ちゃってます。

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スタッフォドシャーの陶器、グレイハウンドはウサギを口に咥えています。
基本的に彼女は狩猟などには反対ではなかったようですが、otter houndsを
使った狩猟は彼女の地所では禁止していたそうです。

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19世紀にインストールされたというサッシ窓。
これがなかったら、どれほど暗い部屋だったことか!!

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Beatrixはロンドンの親の家や、カントリーハウスに住んだ祖母の遺品、
地元の売り立てで購入したアンティークなどをどんどん仕入れ、自分の
好みの家を作り上げていきます。

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これは日本の漆塗りのチェストです。
珍しい、赤。

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18~19世紀に流行った、シルエットのプロフィール。

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さて、二階へ上がりましょう。
その前に、ここの手前に家事用の小部屋があります。

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夏はいいけど、冬はとても寒そうな家ですね・・・。

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階段を上がったところ。
ここも『ひげのサムエルのおはなし』の一場面で使われています。

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[Sitting Room]。
友人・家族用の居間です。

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美しいスクエアピアノはPotter家ゆかりの品です。

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後に夫となる、William Heelis弁護士はとても音楽好きで、踊りの名手
だったそうです。
もしかしたら、交際時代にここで音楽を楽しんだかもしれませんね。

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2階からは家の真正面に位置する菜園が良く見えます。

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しかし、この狭い家にどうやってヴィクトリア時代の大きな家具
を入れたんでしょうかねぇ・・・。
ばらして?

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[Treasure Room]です。
15~18世紀は、「驚異の小部屋」とかコレクションをガラスケース内に
展示したりするのが流行りました。ここはその亜流。

この部屋は主に、小さなものが好きだったBeatrixのコレクションルームです。

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ちょっと外が曇ると中も真っ暗になるので、光の回復を待って。

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ドールハウスです。

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大変りっぱなジョージアン様式の邸宅。
こちらは『2ひきのわるいねずみのおはなし』の中にも出てきます。

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真ん中のハム、あれは物語のものとまったく同じです!!

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ドールハウスの中を覗いていると、少しいけない気分に・・・。

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覗きをするオヂサンの気持ちになってしまいますね。笑

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この額絵なんて、5cmあるかないかですよ?!

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ドールハウスの屋上はコレクションを展示するスペースになっていて、
赤いスカーフはピーターが首に巻いているアレです。

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こちらはブリキのフィギュアのコレクション。
すぐれたビジネスウーマンでもあったBeatrixは『ピーター』が売れると
玩具業界とのタイアップに励みました。

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ミニチュアのコレクション。

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キッドの手袋、2cmあるかないかです。
もちろん、人形用!

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カーテンの柄も何気に可愛い。

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お次は寝室。
このベッドは地元の古い家具だそうです。

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19世紀の同時代人の例にもれず、Beatrixも針持つ人でした。
アメリカ発祥のキルトは近所に住むアメリカ人女性に習ったそうです。
ベッドの飾り、緑色のダマスクシルクには花の刺繍。

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壁紙はWilliam Morrisの"Daisy"。

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暖炉の炉棚にはスタッフォドシャーの陶器の犬。
鏡の額縁は中国製。

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Beatrixが地元の弁護士、William Heelisと結婚したのは移住後8年後。
1913年のこと。
新婦46歳、新郎42歳の晩婚カップルでしたが、彼らは残りの生涯を幸福に
過ごしました。

結局Beatrixは結婚を機に、Hill TopからCastle Cottageに引っ越します。
この寝室は、結婚後に飾り付けたもので、実際に彼女はここで一晩も
眠っていないそうです。なーんだ☆彡

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さて、最後に20世紀になって建て増しした部分に当たる、[New Room]へ。
20年前、ここは開放されていなかったような・・・?

大きな油絵が4枚飾られていますが、その絵はBeatrixの弟Bertramのもの。
他にも父や母の作品が飾られており、彼女はここを家族の作品展示室に
したみたい。

Beatrixの父Rupertは弁護士資格を持ってはいても、一度も実務に就いた
ことのない、働いたことのない有産階級の人でした。
彼は趣味の絵と写真撮影で日を費やし、母Helenは社交に勤しみました。

弟Bertramはロンドンを嫌い、スコットランドへ渡り、そこで農業をしました。
しかし、彼は深刻なアルコール依存症で、わずか43歳で脳出血で亡くなります。

家守娘のBeatrixはロンドンと湖水を往復して家族の面倒を見、最終的に
母と娘だけが生き残った後は母を湖水地方に呼び寄せ、家を与え、
面倒を見たようです。
心理的に距離のある母娘は、母の93歳での死の日まで分かり合えたとは
思えません。

作家、実業家、環境保護活動家、農家、弁護士の妻、老母の娘。
1人で一手に引き受けていた彼女はどれだけ忙しかったでしょう。
母親の死によって、ホッとしたのはまちがいないところ・・・。

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ライティングデスクには手紙形式で綴られた、ピーターラビットの複製が。

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出版社からのお礼状。
『グロースターの仕たて屋』の原稿が送られた件のようですね。

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この部屋のカップボードの中には花魁を描いた白磁が。
たぶん、これも明治日本の輸出品かな。

2階には他に小部屋があり、Beatrixはそこを暗室にしていたそうです。
父譲りの写真の腕前があったようです。

また、2階には隠し階段があり、Cannon家の人々や会いたくない客などが
やってきた際にはそこを使って逃げ出したのですって。(^^;

Hill Topは、Beatrixの「実物大のドールハウス」でした。
だからこそ、彼女はこの家を間借り人を置かず、自分の集めたものを
そのままに保存するよう、ナショナルトラストに注文を出したのでしょう。

Beatrix Potterという、1人の女性が歩み戦い、生活した足跡と息吹が
この屋敷には残されています。


帰りにショップに寄った際、30前後の日本人女性から声を掛けられました。

「なんか、よくわからないんですけど、家の中って見られます?」

「?チケットに入場時間が振ってありますよね?その時間に入口に行けば・・・」

「えっ、そうなんですか?!やだ、さっき行ったらなんか言われて、でも
よくわからなくて、入れないと思ってショップに戻ったんですよー」

チケットを見せてもらうと、すでに10分前に入場時間が来ていました。

「まだ大丈夫と思うから、今から行ってみては?せっかくここまで来たんだし」

「ですよねー。行ってみます。
実はここへ来るときにもバスの運転手さんに道を聞いたら、なんか親切に
ここまで送ってくれたんですよー」

「えっ?
路線バスの運転手さんが??」

「湖のそばの停留所が終点で、そこで降りてここまで歩こうと思ったんですけど
なんか、すごく遠いみたいで。歩くと1-2時間?で、送ってくれるって」

す、すごい。

「それじゃ、見てきます。ありがとうございました~!」

と、彼女は爽やかに去っていきました。

なんか、こういうタイプ、懐かしいわぁ。( ´∀` )

昔、そうだな、20~30年前ってこういう旅行者って結構いましたよね。
若くて、世間知らずで、図太くて。
人の善意に乗って各地をめぐる・・・。

彼女の場合、少しトウが立っていたけれど。苦笑

怖い事や危険予知、世慣れてくると彼女のような旅はとてもできません。

願わくば、彼女が怖い目に遭わずに無事に日本に帰れますように。
冒険もいいけれど、もう少し身の危険にも気を配った方がいいと思うな。
あまりに無防備であけすけで、おばちゃんは少し、不安に思いました。(^^;

| UK_2017 | 00:45 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

こんにちは~ヒルトップ、本当に実物大のドールハウスですね!
中はこんな風だったのかあ、、、と20年経ってようやく分かって何だかホッとしました(笑)
いつかゆっくりまた行って見たいです。

それにしても遭遇した旅行者の女性、すごいなあ、、、
私は絶対無理。何から何までちゃんと調べて自分の不安がないようにしてからじゃないと旅なんて出来ないです。
石橋を叩いて叩いてまた叩いてからやっと渡るタイプなんで(笑)
今でもそういう方いるんだなぁ、、、ってちょっとビックリしました。

| Saori | 2017/08/02 19:18 | URL | ≫ EDIT

ドールハウスです、うん。

Saoriさん

ねね、すごいですよね~!
Saoriさんは慎重タイプなんですね?
私もそう。

宿やルートとか、安全性の確保とか。
そういうことに気を配らずにはいられません。
これは、我々が女性ということもあるんでしょうけども。

昔、バブルの頃の海外旅行ブームの時は上記のようなイージーな
旅行者が多かった気がしますね~。
若いからこそ無計画でいい、みたいな?
行き当たりばったり?
ちょっと、外国人っぽい旅行の仕方ですよね。(^^;

他人の善意が信じられる世の中ならいいですけど、今はねぇ。。。
上記の女性は無事だったからいいようなものの、何年か前の
ルーマニアかどこかで、女子大生が強姦されて殺されましたよね?
人間の善意と悪意は見分けにくいです・・・。

| 真木 | 2017/08/03 10:44 | URL | ≫ EDIT















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