PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

◇Melford Hall

さて、お待ちかね(?)のSuffolk州はLong Melfordにある【Melford Hall】。
こちら、現在はナショナルトラスト所有の物件です。

151019.jpg

写真はGate House。
ここをくぐって左手が駐車場となっています。
この建物は現在、NTのショップ兼トイレですが、往時は左右それぞれに
居住家族が居た模様。

151019-2.jpg

館へ続く道は本来はDeer Parkですが、現在は羊の放牧地。
黒羊ちゃんや白黒羊(ヤギ?)がのんびり草を食んでます。

151019-3.jpg

おお~っ。
見えて来たぞ。

151020-15.jpg

奥に見えるのはBanqueting House。
イチイの並木と壺がパースペクティヴ。

151020-14.jpg

真ん中が邸内への入口で、右が公開されている部分です。
こちらは1942年に火災が出てかなりのダメージをくらった方。
左側は現在も最後のオーナー一族である、第12代准男爵Hyde Parker家が
住んでいて、非公開です。

この屋敷と地所は元々はBury St.Edmundsの司教領でした。
1530年代のHenry8世の修道院解散により、その頃勃興してきた中産階級
であるWilliam Cordellが入手することになりました。
このWilliamの父親は付近の【Kentwell Hall】のClopton家の家令をしており、
彼は息子をそこで育て、息子はロンドンのLincoln's Innへ送られて
法律家の道を歩み始めます。
当時の階級上昇のルートとして、法律家になるというのは常套手段でした。
(貴族外の生まれで上昇しようと思ったら、法律家を目指すのが一番てっとり
早い出世コースです)

Williamはとても頭のいい子供だったのでしょう、あっという間に法曹界で頭角を
表します。
40にもならぬうちに、"Master of the Rolls"(法曹界のNo.3)になり、下院議員
にも選出されました。

また、彼はカトリック教徒でもあり、Mary1世のお気に入りでした。
女王は彼を騎士叙任し、国会の議長にも任じるほど。
また、その後のプロテスタントの女王であるElizabeth1世時代にも
尊敬される地位にとどまりました。

1578年夏、WilliamはElizabeth女王の訪問を受けます。
この際、庭のBanqueting Houseが歓待に使われたそうです。

151020-2.jpg

ここに女王はロンドンから金銀を持ち運び飾りました。
また、Williamも女王に金のカップやらダイアモンドの飾りの付いたエナメル
などを贈ったそうです。
女王を歓待するという途方もない費用負担ときたら!

ちなみにこの時、女王はフランス王の弟アンジューおよびアランソン公爵との
見合い話(?)のためにやって来た模様。
女王、御年45歳・・・。汗 現代だって中年相当(?)なのに、16世紀の
基準で言ったら老婆(汗)ですよ。
この屋敷はフランスの大使との会見に使われたそうです。

151020-3.jpg

扉が古めかしいですね。
ところで、アランソン公爵との実際の顔合わせはこの翌年に行なわれて、
エリザベス1世は彼に"frog"というあだ名をつけ、そのシンボル(?)
としてカエルのイヤリングを耳に付けさえしたそうです。
アランソン公爵は数年後に亡くなるので、この縁談は立ち消えました。
ちなみに彼はエリザベス1世より20歳以上若かったですよ・・・。<享年29歳

151019-28.jpg

こちらはこんな繋がりを強調するために、後の世に作られたステンドグラス。
たぶん、19世紀の作ではないでしょうかね?

さて、WilliamはSuffolkに土地を買い集め、社会的地位を盤石化するために
父親が勤めた主家であるClopton家の孫娘Maryと縁組します。
彼女はヨークシャーとリンカンシャーに広大な領地を持つ、女性相続人でした。

富を蓄積するだけではなくて、現在もVillage Greenに残るHospitalを建てましたが
結局、1581年に彼は嗣子なくして死去します。

151019-4.jpg

ジャコビアン朝のGreat Hall。

Williamの死後、屋敷は妹の孫Thomas Savageに引き継がれます。
1602年のことでした。
Thomasは裕福な女相続人(またか)のElizabeth Darcyと同年結婚。
続く28年間で、なんと19人もの子供を生み出しました!!
す、すご~~い!!(@@;
どんだけ丈夫なの・・・?!
しかも、この奥方、70歳まで生き延びるんですよ・・・。あ、あ、ありえない。

ともかく。
若旦那の方は、当時の国王James1世(スコットランドのメアリ女王の息子ですね)
にMelfordでとれたMuscatel grapeから作った甘口のワインを供出することで
お気に入りになり、また続くCharles1世時代には彼自身がカトリック教徒であった
ことなどから、王妃Henriettaの寵愛を得ます。
時代はカトリック教徒には優しくはなく、徐々に国王大権と議会の争いも深まり
きな臭くなるころ。

Thomasは増え続ける家族のため、屋敷を拡張する必要に迫られます。
なにせ、子供が19人もいたもんですから・・・!!
彼は1635年に亡くなりますが、彼の妻Elizabethは自身の権利でRivers女伯爵
となっていました。
大内乱が始まると彼女の地所はプロテスタントである議会派軍のターゲットと
なり、Melford Hallを始め各地所は破壊および強奪されます。

しぶとくElizabethは生き延びますが、1650年に彼女は負債のために逮捕され
債務者監獄に収監され、翌年死亡。
その息子、第2代Rivers伯爵Johnも同じく収監されていましたが、そこで
Melford Hallの権利を遠い親戚のRobert Codellに強制的に譲渡させられます。

Cordell→Savage→Cordellと戻ったわけですが、これも長くは続かず。
1704年、第3代准男爵Sir John Cordellが26歳の若さで落馬して死にます。
嗣子がなかったため、妹Margaretの嫁ぎ先Firebrace家へ移ります。
(このMargaret、当時としてもかなりの晩婚。5歳年下の夫と結婚したのは
彼女が35歳の時。唯一の跡継ぎCordellを出産して2年で死去)
このFirebrace家はロンドンのワイン醸造業者でした。

さて、このCordell坊やは母とは幼くして死別し、父親とも15歳の時に死別します。
肉親の縁が薄いですね。
このCordellくんはほとんどGeorge1世時代の人です。
彼が4歳の時にGeorge1世がハノーヴァーくんだりからやってきて、
Anne1世の後を継いで戴冠し、George2世が戴冠する直前に亡くなるので。

1737年、25歳の彼はBridget Eversと結婚します。
彼女は地元の女相続人で、相続資産は25,000ポンドもあり、なおかつ
美貌で有名な未亡人でした。
美貌と資産を持ったこの女性と、Cordellくんは恋愛で結ばれたようです。
少なくとも、彼の方は彼女を愛していた。

彼女の方も、財産を夫の屋敷の改築に惜しみなく注ぎました。
時代はGeorgean Style。
それまでのTudorの流れをくむ、古めかしい屋敷の建替が流行っていましたが
こちらの屋敷は窓ガラスを取り換えるとか、使わない古い翼棟を撤去するとか
新しいフレンチスタイル、ロココ様式のサロンなどをインストールするとかの変更
をしたようです。

彼は1759年に嗣子なくして、愛妻を残して亡くなりますが、その遺書には
何度も何度も、"my dear wife"と出てきます。
何もかもを「わが最愛の妻Bridgetに遺す」、と。

その後、何があったのかわかりませんが、3年後に妻Bridgetは再婚します。
1786年に彼女が亡くなると、Melford HallはSir Harry Parkerに売られました。
この一族が屋敷の最後の100年間の所有者になります。

151019-29.jpg

これはTravelling Mirrorです。50cm×50cmくらいのサイズ感。
鏡の上下左右で、五感の内の「嗅覚・聴覚・触覚・味覚」を表し、
真ん中の鏡が「視覚」を表すそうです。

151019-30.jpg

これは花の匂いを嗅ぐ・・・嗅覚の刺繍ですね。

151019-31.jpg

うーむ?
鳥や亀にエサをあげてるから、味覚か?
このスチュワート朝の女性の髪形やおとぼけの表情がかわいい。

話を戻して、新たなオーナーについて。
1786年にこちらを購入したSir Harry Parkerは成功した海軍軍人でした。
時代は風運急を告げるアメリカ独立戦争後およびフランス革命の直前。
イギリスではGeorge3世の時代です。首相はmy LoveのWilliam Pittさま。

フランス革命に続く、ナポレオン戦争時代まで、イギリス海軍は
一時代を築くわけです。

で、Sir Harryです。
彼の一族は海軍軍人を輩出した一家であり、長男の彼が第6代准男爵、
その弟は海軍提督Sir Hyde Parker2世となります。
父のSir Hyde Parker1世は第5代准男爵にして、副提督でした。
後に、長男の長男(つまり孫)とこの祖父は同じ海戦にて戦死を遂げます。
孫は15歳でした・・・。
海軍士官は10歳ちょっとで船に乗り始めるのが普通の時代ですが。
次男、三男が爵位と屋敷を順繰りに継ぎますが、彼らは跡継ぎを
遺さず、Sir Harryの弟の孫Sir William Parkerが第9代准男爵になり、
屋敷を継承して、その子孫が現代に至ります。

この第5代准男爵はアジアやインドでも戦い、拿捕した船のお宝を獲得。

151019-18.jpg

これはインドの細密な細工の箱。

151019-21.jpg

地図はイギリスでも最古と呼ばれる古地図。
その前に飾られているのはフィリピン製のキリスト像。

151019-22.jpg

1mくらいあるかなぁ。
経絡(ツボ?)や、血管みたいな筋があったりしてコワイ。
1915年にこの家に盗賊が入り、この像に飾られていたダイヤモンドやルビー、
エメラルドなども含めてごっそり盗まれたそうです・・・。

ちなみにこのSir Harryの弟というのが、Sir Hyde Parker2世というイケメンで
海軍提督です。
10代初めで海軍に入り、19歳で海軍大尉になります。
初期の軍務は父親の戦艦で過ごしました。

海軍に限らず、陸軍も教会もそうですが、イギリスはコネがものをいう社会。
有力な血縁・親族の引きがなければ何事も成せない時代でした。
海軍にコネがあるなら、海軍へ進む。それ以外に立身出世する道はありません。

いろいろ軍歴と軍功を重ね、彼は騎士に叙任され、最終的には1799年に
海軍提督へ昇り詰めます。
1801年にはかのHoratio Nelsonを副司令官として、コペンハーゲンの海戦
参加します。

Parker提督は慎重派、Nelsonくんは好戦派だったようです。
結局、この海戦はParkerの「攻撃停止」を無視したNelsonくんに
勝機が上がりました。
Parkerの提督位はこの戦いで子爵に叙爵されたNelsonに受け継がれました。
ちなみにこの方、最初の結婚で3人の息子を得、2番目の妻を迎えたのは
彼が61歳で新婦は18歳だったそうです・・・。

151019-25.jpg

大階段。

151019-26.jpg

左の壺の下にあるのは新しいヒーティングシステムの通気口。
このような通気口から出た暖められた空気が、館の暖房となりました。

151019-27.jpg

中国製のでっかい壺の上の獅子?

151019-23.jpg

紋章入りの陶磁器。

151019-24.jpg

角のある動物のスカル?
所有者であった3家系の、いずれの家紋でしょうね。

151019-7.jpg

Dining Room。
先々代准男爵夫人が、1942年の火事で焼け落ちた部屋を北欧スタイルで
改修しました。

このHyde Parker家(第10代准男爵)に嫁いだEthel LeechはBeatrix Potter
仲良しの従姉妹でした。
Potterはこの屋敷を何度も訪れたゲストで、屋敷には彼女専用の部屋まで
用意してありました。

151019-8.jpg

ダイニングテーブルにはPotterのネームプレートの複製画が。

151019-9.jpg

"誰の席?"

151019-10.jpg

"ここは私の席かな?"

151019-11.jpg

"ぼくはまたここ!"

・・・みたいな。これは子供たちは喜んだでしょうね~。
Potterは彼らの長女、Stephanieがお気に入りで、庭の池ではよく蛙の
スケッチをしていたそうです。
第二次世界大戦中、結婚後に空き家になっていた湖水地方のHill Top農場を
一家に提供さえしました。他の誰にもそんなこと、許しませんでした。

また、こちらの屋敷の暖炉などをモデルに"The Tailor of Gloucester"の
イラストもいくつか描かれたそうです。

151019-5.jpg

こちらは17世紀のフランドル絵画。

151019-6.jpg

この頃はヨーロッパがとても寒かったんですよね。
今でもオランダやベルギーの冬は厳しいですが、小氷河期とも言われたほど。
スケートをする様が描かれていますが、すご~い!
みんなかなり滑れる感じですね。

151019-12.jpg

こちらは、Drawing Roomでしょうか。

151019-13.jpg

ピアノやカードテーブル、刺繍台なども見えますね。
女性たちの部屋です。

151019-14.jpg

こちらは打って変わってマスキュリン、男性的な区画。

151019-15.jpg

イオニア式の柱は「なんちゃって大理石」な気がする。
Libraryです。
こちらの蔵書も名高いそうです。

151019-16.jpg

図書室の一番奥まった辺りはこのように、

151019-17.jpg

扉を閉めると、密室に。
知らなければどこから出入りするのかわかりませんね。

151019-20.jpg

Great Hallの窓には古い時代のステンドグラスのコラージュが。

151019-19.jpg

大陸から伝わったもののような感じ。
フランドルとかベルギーとか、あの辺のステンドグラスっぽい。

151019-32.jpg

Potterの専用私室。

151019-33.jpg

シンプルですね。

151019-34.jpg

これはたぶん、召使い等が使ったと思われる古い時代の螺旋階段。
Potterの部屋は塔の部屋です。

151020.jpg

比較的小さな屋敷ではありますが、けっこう見ごたえ十分。
ちょっと休憩して、庭へ!

| UK_2015 | 00:33 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://willows66.blog.fc2.com/tb.php/337-a1d2a29f

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT